この記事で分かること
  • 特定技能人材の支援計画は申請時の提出にとどまらず、在留中の確実な実施と記録の保管が適正な受入れ基準の維持に直結
  • 登録支援機関へ支援を委託している場合でも、施設側が支援内容と実施状況を定期的に点検する体制を整えることが求められます
  • 直近の定期面談記録に本人の理解度や未対応の困り事が具体的に残されているかを確認することから始められます
  • ケアコンパスでは支援業務費のなかで、定期面談の実施後に詳細な状況報告を行い、現場の課題や本人の悩みを施設と共有しながら形骸化を防ぎます

支援計画は申請時に作ったものの、内容までは覚えていない。支援機関に任せている施設では、そんなこともあるのではないでしょうか。

支援計画は、特定技能外国人が安心して働き、生活するための支援を定めたものです。提出後も計画に沿って支援を続け、委託している場合も施設で実施状況を確認する必要があります。

この記事では、支援計画の位置付けと内容、書類だけにしないための確認・運用方法を、一般社団法人外国人介護留学生支援機構(ケアコンパス)の青山がお伝えします。

特定技能の支援計画とは?

特定技能の支援計画とは?

特定技能の支援計画とは、特定技能1号の外国人が日本で安定して働き、生活できるよう、受入れ機関が行う支援の内容や方法を定めた計画です。在留資格の申請時に提出し、受け入れ後は計画に沿って支援を行います。

関連記事:「特定技能とは?制度の概要や対象分野、受け入れ条件をわかりやすく解説」

支援計画は提出して終わりではなく在留中ずっと実施

支援計画は、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請の際に必要な書類です。審査では、記載した支援の内容や実施方法が基準に合っているかを確認されます。

ただ、申請が通れば役目を終えるわけではありません。入職前の説明や住居の確保から、入職後の相談対応、定期面談まで、それぞれの時期や本人の状況に応じて支援を実施する必要があります。

施設では、申請時の書類がそろっているかに加えて、今どのような支援が行われているかも確認してください。計画に書かれた支援が実施されていなければ、適切な受け入れを続けるための基準にも関わります。

受入れ機関の基準や義務の全体像は、「特定技能の受入れ機関にはどんな義務がある?」でも解説しています。

支援計画は誰が作成し誰が実施するか

支援計画を作成する主体は、外国人職員を雇用する受入れ機関です。介護施設の場合は、雇用主である法人がこれに当たります。支援は自ら実施するほか、全部または一部を登録支援機関に委託できます。

施設の担当者とお話ししていると、「支援は支援機関に任せている」という声をよく聞きます。専門の担当者に任せられることは、施設にとって安心材料の一つです。

ただし、全部委託によって満たしたとみなされるのは支援体制に関する基準です。施設が支援の内容を知らなくてもよい、ということではありません。

誰がどの支援を担当し、実施後にどのような報告を受けるのかを委託先と施設で共有しておくことが、支援の抜け漏れを防ぐ出発点になります。

関連記事:「特定技能「介護」の受け入れ条件を解説!対象施設・人数枠・協議会・支援体制・雇用条件の5要件とは?」

支援計画に書かれている内容を解説

支援計画に書かれている内容を解説

支援計画書には、支援の内容だけでなく、担当者や実施方法、対応する言語などが記載されています。まずは計画書を手元に置き、自施設で誰が何を行うことになっているかを確認してみてください。

義務的支援10項目一覧

特定技能1号の外国人に対する義務的支援は、次の10項目です。ここでは、計画書の内容を確認するために全体像を紹介します。

支援項目 主な内容
①事前ガイダンス 申請前に労働条件や入国手続きなどを説明する
②出入国する際の送迎 入国時・帰国時に空港などへの送迎を行う
③住居確保・生活に必要な契約支援 住居の確保や銀行口座・携帯電話などの契約を支援する
④生活オリエンテーション 生活上のルールや災害時の対応などを説明する
⑤公的手続等への同行 必要に応じて行政手続きに同行し、書類作成を補助する
⑥日本語学習の機会の提供 日本語教室や学習教材などの情報を提供する
⑦相談・苦情への対応 本人が十分理解できる言語で相談を受け、対応する
⑧日本人との交流促進 地域の行事などを案内し、交流への参加を支援する
⑨転職支援(人員整理等の場合) 受入れ側の都合で雇用契約を解除する場合に転職を支援する
⑩定期的な面談・行政機関への通報 本人や上司等と定期的に面談し、法令違反があれば通報する

これらの支援を誰が、いつ、どのような方法で実施するかを計画書で確認します。義務的支援に加えて、施設や支援機関が任意で行う支援もあります。

支援計画は本人が理解できる言語で説明し署名を得る必要がある

支援計画は、施設と支援機関だけで共有する書類ではありません。

日本語と本人が十分理解できる言語で作成し、内容を理解したうえで署名してもらい、本人にも写しを渡す必要があります。母国語に限らず、本人が内容を十分理解できる言語であることが基準です。

ケアコンパスでも、本人の日本語の理解度に応じて母国語で説明し、内容を理解できているかを確かめています。

署名があっても、本人がどんな支援を受けられるか、困ったときに誰へ相談するかが分からなければ、支援を利用しにくくなります。施設としても、本人が相談先を把握しているかを一度確かめておきましょう。

支援計画が書類だけになっている施設3パターン

支援計画が書類だけになっている施設3パターン

支援計画を作成していても、内容や実施状況を確認する機会がなければ、日々の支援とのつながりが見えなくなります。自施設ではどうなっているか、次の3つのパターンと照らし合わせて確認してみてください。

①作成したきり誰も読んでいない

申請の準備が終わると、支援計画書を読み返す機会は少なくなるかもしれません。担当者が異動・退職した際に、保管場所だけを引き継ぎ、支援内容までは共有できていないことも考えられます。

支援機関に任せている施設では、日々の対応は進んでいても、施設の担当者が計画の内容を把握しにくくなりがちです。

まずは、支援計画書の保管場所を、現在の担当者が把握しているかを確かめてください。そのうえで、相談先や担当者、継続して行う支援に目を通しておくと、本人から相談があったときにも対応しやすくなります。

②実施記録がない・形式だけの実施

支援を行ったかどうかは、計画書だけでは分かりません。いつ、誰が、何を行ったかを確認できる記録が必要です。

例えば、生活オリエンテーションや面談を日本語だけで行った記録があっても、本人が内容を理解できているかは別に確かめる必要があります。日本語で説明すること自体が問題なのではなく、その本人に十分伝わっているかがポイントです。

日本語学習の機会の提供も同様です。教室や教材を案内して終わりにせず、本人が利用方法を理解できているか、利用したくても困っていることはないかまで聞くと、次に必要な対応が見えてきます。

記録を見る際は、実施日だけでなく、本人の理解度や未対応の困り事が書かれているかにも注目してください。

関連記事:「外国人介護職員の受入れ初日に行うオリエンテーションとは?時系列の進め方とやってはいけないこと解説」

③委託先との情報共有ができていない

支援を委託していると、施設で把握した本人の変化も、支援機関に伝わっていると思ってしまうことがあります。

私たちの支援先でも、定期面談や在留期間更新の準備をしているときに、本人が引っ越していたと分かることがありました。確認すると本人は施設には報告していましたが、私たちには連絡が届いていませんでした。

施設には伝えてくれていても、支援機関が知らないままだと、新しい住まいで困っていないか、必要な手続きが済んでいるかを確認できません。

施設で本人から報告を受けたときは、支援機関にも一報いただけると助かります。私たちからも面談で聞いた話を施設へ伝え、お互いが本人の状況を把握したうえで支援を続けたいと考えています。

支援計画の形骸化が施設にもたらす悪影響は?

支援計画の形骸化が施設にもたらす悪影響は?

支援計画と実際の対応が離れてしまうと、届出や在留期間更新の際に支援状況を説明しにくくなります。それだけでなく、本人の困り事に気づく機会を逃し、働き続けるための対応が遅れる心配もあります。

定期届出・在留期間更新で支援の実施状況が問われる

支援の実施状況は、出入国在留管理庁への定期届出で報告します。

2025年4月の制度改正により、受入れ機関の定期届出は年1回になりました。ただし、定期面談は引き続き3か月に1回以上必要です。届出の頻度が減っても、支援を行う頻度まで減るわけではありません。

記録が残っていなければ、いつ、どのような支援を行ったかを正確に報告することが難しくなります。在留期間更新の準備でも、計画と実施状況を確認できるようにしておく必要があります。

また、支援計画に届出が必要な変更があった場合は、原則として変更日から14日以内に届け出ます。年1回の定期届出まで待つことはできません。

施設では、届出や更新の直前に記録を探すことにならないよう、支援機関と普段から実施状況を共有しておきましょう。

関連記事:「特定技能の定期届出と随時届出とは?年1回への変更点と怠った場合の影響をわかりやすく解説」

相談・面談が形だけで支援が機能していないと離職の芽を拾えない

支援計画は、本人が安心して働き続けるためのものです。面談を行っていても、困っていることを話せないままでは、施設も対応するきっかけをつかめません。

私たちが受ける相談は、仕事や人間関係の悩みが多くを占めます。施設には言いにくいことを、支援機関である私たちに打ち明けてくれることもあります。

退職を決めてから相談を受けても、本人の気持ちを変えるのは難しいことがあります。悩みが大きくなる前に施設と共有し、職場で変えられることはないかを、一緒に考えるようにしています。

関連記事:「外国人スタッフとの面談で何を話す?質問例と「大丈夫です」で終わらせない工夫」

生きた支援計画にする施設側の運用方法は?

生きた支援計画にする施設側の運用方法は?

支援計画を日々の支援に生かすために、施設で取り組めることは3つあります。計画書と記録を確認できるようにすること、支援機関からの報告を読むこと、本人に支援内容や相談先を伝えることです。

支援計画書と実施記録をセットで保管し定期的に見直す

支援計画書と、面談や生活上の支援を行った記録は、まとめて保管しておきましょう。紙でもデータでも、担当者が変わったときに、これまでの支援と未対応の事項を引き継げる形にしておきます。

年1回の定期届出前には、計画に沿って支援できているか、記録がそろっているかを確認する機会を設けてください。

加えて、本人の住居や施設・支援機関の担当者などに変化があった場合は、その都度、計画の見直しが必要かを確認します。

支援計画の変更には届出が必要なものと、軽微な変更として対象外になるものがあるため、支援機関と確認しながら進めてください。

委託先からの実施報告を受け取り施設側で読む

支援機関からの報告には、本人が施設に直接話せていない悩みが含まれることもあります。

報告を受けたら内容を読み、施設で対応できることがないか確認してください。報告が届かないときや、普段の本人の様子と内容が合わないときは遠慮なく支援機関に問い合わせてください。

私たちは面談の後、現場の責任者に本人から聞いた話を伝え、必要に応じて事務長にも報告しています。人間関係の悩みを伝えたことで、施設が部署異動などの対応をしてくださったこともありました。

ありがたいことに、相談するときちんと対応してくださる施設がほとんどです。私たちだけでは職場の問題は解決できないので、施設と話し合いながら進められることを心強く感じています。

ケアコンパスは介護分野に特化した登録支援機関です。面談後は施設へ報告し、その後の対応状況も施設と共有しながら支援しています。支援業務費は月額3万円です。

関連記事:「登録支援機関を変更するには?介護施設が14日以内に出す届出と引継ぎの手順」

本人に支援計画を再説明する機会をつくる

申請時に説明を受けても、そのときは困っていなければ、どんな支援を受けられるのか覚えていないことは珍しくありません。いざ困ったときに誰に聞けばよいか分からず、相談できないままになってほしくありません。

私たちも定期面談のたびに、困ったことがあればいつでも連絡してよいと伝えています。

施設でも、在留期間更新の前など節目のタイミングで、受けられる支援と相談先をあらためて説明する機会をつくってください。

その際は、本人が十分理解できる言葉で、何を相談できるのか、誰に連絡すればよいのかを具体的に伝えることが大切です。

まとめ

特定技能の支援計画は、申請時に提出し、受け入れ後も支援を続けるための計画です。委託している施設でも、計画の内容と実施状況を確認する必要があります。

作成したきり読まれていない、実施が形だけになっている、委託先と情報を共有できていない。このどれかに当てはまる場合は、支援計画が書類だけになっているかもしれません。

まずは計画書と記録の保管場所を確認し、直近の面談報告に目を通してみてください。本人が支援内容や相談先を分かっているかも、日々の会話で確かめられます。

私たちが施設にお願いしたいのは、本人の変化に気づいたときに共有していただくことです。お互いに知っていることを伝え合い、協力しながら支援を続けていけたらと考えています。

現在の支援内容や役割分担に不安がある場合は、ケアコンパスへご相談ください。施設の状況を伺いながら、一緒に確認します。

委託先の変更を検討している施設は、「登録支援機関の変更をご検討の介護施設様へ」で切替え・引継ぎの流れをご覧ください。