この記事で分かること
  • 外国人介護職員を初めて受け入れる場合、モノの準備だけでなく受入れ責任者や教育担当者といった人・組織の仕組みを事前に整えることが重要。
  • 支援機関ごとに支援範囲と費用体系が異なるため、法定支援の範囲と生活支援の実態を確認したうえで判断することが重要。
  • 受入れ前には既存職員へ採用の目的や教育への協力を説明し、誰もが分かりやすい指示や共有のルールを整える。
  • 教え方のばらつきや指示の曖昧さは誤解を生むため、施設全体で基本のやり方を統一する。
  • ケアコンパスでは、延べ支援人数160名の実績を背景に、受入れ前の体制づくりから入職後の定着支援まで施設ごとの状況に合わせてサポートます。

外国人介護職員の採用が決まると、住居や必要書類の準備と同時に考えておきたいのが、施設内の受入れ体制です。

「現場では誰が中心になればいいのか」「既存職員には何を説明しておけばいいのか」と、不安に感じる施設も少なくありません。

受入れ体制を整えるうえで大切なのは、モノをそろえることだけではなく、人の配置と情報を共有する仕組みをつくることです。

この記事では、受入れの中心になる人の決め方、既存職員への説明、相談の仕組み、支援機関との役割分担という4つのポイントから、現場でできる準備をご紹介します。

この記事は、一般社団法人 外国人介護留学生支援機構(ケアコンパス)で、外国人介護職員の受入れ・定着支援を行っている青山が、実際の介護施設を支援する中で経験してきたことをもとにお伝えしています。

外国人介護職員の受入れ体制づくりはモノと人・組織の準備を分けて考える

外国人介護職員の受入れ体制づくりはモノと人・組織の準備を分けて考える

外国人介護職員の受入れ準備には、大きく分けて以下の2つがあります。

一つは、住居や必要書類、生活用品などのモノ・手続きの準備です。もう一つが、今回お伝えする人・組織の準備です。

人・組織の準備に必要なこと

人・組織については、まず次の4つを決めておくと進めやすくなります。

  • 受入れの中心になる人を決める
  • 既存職員に受入れの目的や接し方を説明する
  • 本人と施設双方の相談・共有の仕組みをつくる
  • 施設と登録支援機関の役割分担を決める

受入れが初めての施設では、どうしても住居や書類など、目に見える準備に意識が向きがちです。

もちろん、それらも必要です。ただ、働き始めてから外国人職員が毎日関わるのは、施設で一緒に働く人たちです。

だからこそ、入職前に受入れる側の体制を整えておくことが、その後の安心や定着につながります。

住居や手続きなどの準備については、外国人採用が初めての方向けのページで詳しくご紹介しています。

外国人介護職員受入れの中心になる責任者と教育担当を決める

外国人介護職員受入れの中心になる責任者と教育担当を決める

職員みんなで見ていこうと考えること自体は、とても良いことです。ただ、中心になる人を決めないまま始めると、困りごとが起きたときに誰が対応するのか分からなくなることがあります。

まずは、受入れの中心になる人を明確にしておきましょう。

現場・経営・支援機関の連絡役となる受入れ責任者の役割

受入れ責任者は、施設長や管理者など、現場だけでなく施設全体を見られる方から一人決めておくとスムーズです。

主な役割は次の3つです。

  • 現場で起きている困りごとを集める
  • 必要に応じて経営層へ報告する
  • 登録支援機関との窓口になる

大切なのは、外国人職員の受入れを教育担当者だけの仕事にしないことです。

例えば、教育担当者が本人のちょっとした変化に気づいても、その情報が施設長や管理者まで届かなければ、対応が遅れてしまうことがあります。

反対に、責任者が明確になっていれば、小さな変化も施設全体の課題として共有できます。

外国人職員が育つかどうかは、教育担当者一人の力量ではなく、施設全体でどれだけ支えられるかにかかっています。

責任者を決めておくことは、現場だけに任せず、施設として受け入れていくという意思表示にもなります。

関連記事:「外国人介護職員の教育担当はどう決める?向いている人の条件と負担を軽くする工夫を解説」

教育担当の位置付けと決め方

受入れ責任者とは別に、日々の業務を教える教育担当も決めておきます。ケアコンパスでも、受入れ前に教育担当者を決めていただくよう施設へお伝えしています。

教育担当は、介助方法や一日の流れ、施設独自のルールなどを、本人と一緒に現場で確認していく役割です。誰に聞けばよいかが本人の中で明確になっているだけでも、仕事を覚えるときの安心感は変わります。

ただし、教育担当者一人にすべてを任せるわけではありません。責任者が全体を見ながら、教育担当者が日々の指導を行い、周囲の職員も支える形をつくることが大切です。

教育担当者を誰にするか、負担をどう減らすかについては、別の記事で詳しくご紹介します。

関連記事:「外国人介護職員の教育担当はどう決める?向いている人の条件と負担を軽くする工夫を解説」

既存職員への説明で外国人介護職員受入れについて伝えるべきことは?

既存職員への説明で外国人介護職員受入れについて伝えるべきことは?

外国人職員の受入れは、本人が出勤する初日から始まるわけではありません。

それより前に、既存職員へ受入れの目的や接し方を説明しておくことが大切です。

既存職員へ説明する方法

現場で多くの施設を見ていると、外国人職員本人への説明と同じくらい、迎える側の不安を減らしておくことが、その後の受入れをスムーズにすると感じます。

既存職員には、まず次の3点を伝えておきましょう。

  • なぜ外国人職員を採用するのか
  • 既存職員の雇用や処遇が変わるものではないこと
  • 入職後の業務分担と教育への協力

介護業界では、人手不足が続いています。外国人職員を採用する目的も、外国人だから採用するのではなく、新しい人材に仲間として加わってもらい、将来的には現場全体の負担を減らしていくためです。

また、施設によっては給与について既存職員から疑問が出ることもあります。

特定技能外国人については、報酬額を日本人が同等の業務に従事する場合と同等以上にすることが求められています。そのため、経験が浅かったり、日本語にまだ不慣れだったりする外国人職員に対して、給与について疑問を感じる職員がいることもあります。

その場合は、疑問を否定するのではなく、制度上の考え方を説明したうえで、本人にも仕事を覚え、施設の戦力になってもらえるよう教育していくことを伝えます。

曖昧なままにしておくより、入職前に説明しておいたほうが、現場も安心して受入れに協力できます。

職員から出やすい質問

受入れ前の説明では、既存職員からさまざまな質問が出ます。

例えば、以下のような質問です。

  • 「日本語はどのくらい話せるの?」
  • 「漢字は読めるの?」
  • 「利用者さんとの会話は大丈夫?」
  • 「宗教上、お祈りの時間などは必要なの?」

こうした質問が出ること自体は、問題ではありません。知らないことに不安を感じるのは、外国人職員も日本人職員も同じです。

ケアコンパスでご紹介するベトナム人材には、日本に来たばかりの方だけでなく、すでに日本で1〜2年程度の生活・就労経験がある方もいます。

そのため、受入れ前には本人の日本語力や日本での経験、必要な配慮などを施設へ具体的にお伝えしています。

実際の支援先でも、受入れ前は職員から日本語や宗教について心配する声が出ていました。そこで、本人の日本語力やこれまでの日本での生活経験、必要な配慮について一つずつ説明しました。

関連記事:「外国人スタッフとの面談で何を話す?質問例と「大丈夫です」で終わらせない工夫」

外国人職員に対する答え方の注意点

説明を聞いた職員からは、「思っていたより、普段どおりに接して大丈夫なんですね」という声があり、受入れに対する不安も少しずつやわらいでいきました。

そのうえで、私たちから既存職員へお願いすることもあります。その一つが、できるだけ標準語に近い、分かりやすい日本語で話すことです。

外国人職員は標準語を中心に日本語を勉強していることが多いため、関西では当たり前に使う言葉でも伝わらないことがあります。

例えば、「ゴミをほかしておいて」ではなく、「このゴミを、ゴミ箱に捨ててください」と伝えたほうが分かりやすくなります。

また、「あれ、やっといて」「あの人、お願い」といった、主語や対象が分からない指示にも注意します。

誰に、何をしてほしいのかまで具体的に伝えることがポイントです。

誰が聞いても分かる指示に変えることは、外国人職員だけでなく、日本人の新人スタッフにとっても働きやすい職場づくりにつながります

相談窓口と支援機関との役割分担で困りごとが集まる仕組みをつくる

 

体制づくりの仕上げとして、何かあったときの相談先を決めておきます。

相談できる人をたくさん用意することより、本人が迷わず相談でき、必要な情報が施設や支援機関へ届く流れをつくることが大切です。

本人の相談先を分かりやすくする

外国人職員本人にも、内容ごとの相談先を伝えておきます。例えば、以下のような形です。

  • 業務について分からないこと → 教育担当者
  • 勤務についての相談 → 施設の責任者
  • 生活について困ったこと → 登録支援機関

相談先は、多ければ多いほど安心というわけではありません。

AさんでもBさんでも施設長でも大丈夫と言われると、かえって誰に話せばよいか迷ってしまうことがあります。まずは、内容ごとに誰へ相談すればよいかを分かりやすくしておきます

ケアコンパスでは、ベトナム人スタッフが外国人職員と日頃から連絡を取っています。普段の会話の中で、施設では言い出せなかった小さな悩みが出てくることもあります。

内容によっては私たちが施設との間に入りますが、本人から施設へ直接伝えたほうがよいことについては、伝え方を一緒に考えることもあります。

支援機関だけに頼るのではなく、本人が施設の中でも安心して相談できる関係を築いていくことが、長く働き続けるための土台になります。

施設と登録支援機関の役割分担を最初に決めておく

もう一つ決めておきたいのが、施設と登録支援機関の役割分担です。特定技能1号では、生活オリエンテーションや相談・苦情への対応、定期的な面談など、受入れ機関が行う義務的支援の枠組みがあります。

登録支援機関へ支援を委託する場合は、どの支援を支援機関が担い、日々の業務上の相談を施設側でどのように受けるのか、受入れ前に確認しておきます。

ここが曖昧なまま始まると、施設側は支援機関が対応していると思い、支援機関側は施設で対応していると思っていた、ということが起こりかねません。

ケアコンパスでは、義務的支援に対応するだけでなく、受入れ前に支援内容を施設へ詳しく説明しています。それ以外に必要なサポートがある場合も、施設と相談しながら、どちらが対応するのかを整理してから受入れを進めています。

大切なのは、支援機関が何でも代わりに対応することではなく、本人・施設・支援機関が一緒に解決できる関係をつくることです

外国人介護スタッフの受入れ体制づくりでよくある失敗

受入れが初めての施設では、準備していても思わぬところでつまずくことがあります。

よくあるケースと対策をご紹介します。

教育担当者一人に任せてしまう

教育担当者だけが状況を把握していると、責任者や施設長まで困りごとが届かず、一人で抱えてしまうことがあります。

教育担当者から責任者へ、定期的に状況を共有する流れを決めておくと安心です。

既存職員への説明をしないまま初日を迎える

外国人職員が突然現場に入ると、既存職員も接し方が分からず戸惑います。

その雰囲気は本人にも伝わります。入職前に本人の日本語力や経歴、教育方法、必要な配慮を共有しておくと、双方の不安を減らせます。

教える人によってやり方が変わる

これは、私たちも比較的よく相談を受けるケースです。ある施設では、Aさんから教わった方法で仕事をすると、翌日にBさんから違う方法を指示されることがありました。

本人は教わったとおりに仕事をしているつもりなのに注意されるため、次第に何が正しいのか分からなくなってしまいました。さらに、その様子が周囲から見ると、話を聞いていない、教えたことをやらないと受け取られかけていました。

そこで施設には、最初に教える基本的な業務のやり方を統一してもらいました。職員それぞれの工夫があっても構いませんが、入職したばかりの時期は、まず基本となる方法を同じにします。

また、教育に関わる職員が同じ研修を受け、指導内容を共有することもおすすめしました。その後は教え方のばらつきが減り、本人も迷わず仕事に取り組めるようになりました。

教える側の伝え方がそろっているかどうかが、外国人職員の理解度を大きく左右します。

まとめ|受入れ体制は人の配置と共有の仕組みから整える

外国人介護職員の受入れ体制づくりで大切なのは、特別な設備を用意することではありません。

まずは、以下の4つから始めてみてください。

  • 受入れの中心になる人を決める
  • 既存職員へ受入れの目的や接し方を伝える
  • 相談・情報共有の仕組みをつくる
  • 登録支援機関との役割分担を明確にする

基本は、日本人スタッフを迎えるときと同じです。そこに、言葉や文化、日本で働いてきた経験の違いに合わせた配慮を少し加えます。

実際の施設を見ていると、外国人職員のために整えた配慮が、結果的に職場全体の仕事のしやすさを底上げするケースが多くあります。

外国人介護職員の受入れは、一人の担当者だけが頑張るものではありません。

施設全体で新しい仲間を迎え、困ったときには支援機関も一緒に考える。最初から完璧な体制でなくても、受入れながら少しずつ改善していけば大丈夫です。

ケアコンパスでは、外国人職員の紹介だけでなく、受入れ前の体制づくりから入職後の定着まで、施設ごとの状況に合わせて支援しています。

初めての外国人採用や受入れ準備についてお困りの場合は、外国人採用が初めての方向けのページもぜひご覧ください。