「他の施設で、外国人採用がうまくいかなかったと聞いた」

「人手は必要だけれど、うちで受け入れて本当に大丈夫だろうか」

外国人介護人材の採用を検討している施設からは、こうした不安を聞くことがあります。

ただ、私たちが実際の施設を支援していて感じるのは、外国人採用の失敗には、ある程度決まったパターンがあるということです。

反対に、受け入れがうまくいっている施設にも共通点があります。

大切なのは、採用することだけを考えず、入職後まで含めて準備しておくことです。

外国人介護人材の採用でよくある3つの失敗パターンと、成功している施設の共通点、採用前に確認しておきたいポイントをご紹介します。

この記事は、一般社団法人 外国人介護留学生支援機構(ケアコンパス)で、外国人介護職員の受入れ・定着支援を行っている青山信明が、実際に多くの介護施設を支援する中で感じたことをもとに執筆しています。

外国人介護人材の採用でよくある3つの失敗パターン

外国人介護人材の採用でよくある3つの失敗パターン外国人採用の失敗は、突然起こるものばかりではありません。

ご相談いただく施設を見ていると、採用前や受入れ初期の考え方に、いくつか共通するつまずきがあります。

安い労働力と考えて採用する

最初に気をつけたいのが、外国人介護人材なら人件費を抑えられる、という考え方から採用を始めることです。

特定技能では、日本人と同等以上の報酬を支払うことが求められています

それでも実際には、「介護経験がないから給与を下げられないか」「日本語がまだ十分ではないから、その分下げたい」と相談されることがあります。

ただ、介護経験がない人は、日本人の採用でも珍しくありません。

また、外国人採用を検討している施設の多くは、日本人を募集してもなかなか応募が来ないという悩みを抱えています。

その中で、日本語力だけを見て採用のハードルを上げすぎると、せっかく出会えた人材まで逃してしまうことがあります。

もちろん日本語は大切です。

ただ、今の日本語力だけで判断するのではなく、働きながらどこまで伸びていけるかを見ることも大切だと、私たちはお伝えしています。

人手不足が続いて負担が大きくなるのは、今働いている日本人スタッフです。

外国人だから安く雇うのではなく、これから一緒に働きながら育っていく職員として迎える。私たちは、その前提を施設内でそろえることが大切だと考えています。

入職後の支援を丸投げ・放置する

「紹介会社や登録支援機関にお願いしたから、入職後も全部やってくれるだろう」

受け入れが初めての施設では、そう考えてしまうことがあります。

ただ、登録支援機関は雇用主ではありません。

私たちの役割は、施設に代わって問題を解決することではなく、施設と外国人職員がお互いに働きやすい環境をつくれるよう支えることです。

実際に、外国人スタッフのトレーニングは現場と登録支援機関に一任という形で、外国人職員からの不満や困りごとをほとんど把握できていない施設がありました。

弊社で外国人職員からの相談を受けたものの、業務の細かなやり方についての相談が多く、登録支援機関で介入して改善するには難しい内容でした。

そこで、弊社のご提案で、施設と本人が定期的に話す機会をつくってもらい、もともとおられる現場スタッフへ相談しやすい環境を整えてもらいました。

その結果、現場で解決できることは施設で早めに対応できるようになりました。

支援機関が答えを出し続けるより、施設が自分たちで考え、対応できるようになるほうが、長い目で見ると大切だと私たちは考えています。

丸投げするのでも、施設だけで抱え込むのでもありません。

採用前に施設が担うことと外部に相談することを整理しておくと、入職後も動きやすくなります。

現場の受入れ体制を整えずに迎える

実際の支援でも多いのが、経営側では外国人採用について理解していても、受入れの目的が現場まで伝わっていないケースです。

現場スタッフからすると、突然外国人職員が来たように感じます。

「誰が教えるの?」

「日本語はどれくらい分かるの?」

そんな戸惑いは、外国人職員にも伝わります。

本人が「歓迎されていないのでは」と不安になることもあります。

だからこそ、入職日だけでなく、なぜ受け入れるのか、どのように育てていくのかまで事前に共有しておくことが大切です。
関連記事:「外国人介護職員の受入れ初日に行うオリエンテーションとは?時系列の進め方とやってはいけないこと解説

教育担当者や本人の目標、進み具合を確認する人も決めておくと、現場と管理側の認識を合わせやすくなります。

最初から完璧な体制をつくる必要はありません。課題が出たら、その都度確認しながら少しずつ整えていけば大丈夫です。

外国人だから特別な受け入れをするというより、新しい職員を迎えるときの基本を丁寧にする。そのうえで、言葉や文化の違いに少し配慮するくらいがちょうどよいと思います。

失敗に共通する原因は採用がゴールになっていること

失敗に共通する原因は採用がゴールになっていること

ここまで紹介した3つの失敗は、それぞれ違う問題に見えます。

ただ、私たちが現場を見ていて感じるのは、根っこに同じ原因があるということです。

それが、採用すること自体がゴールになっていることです。

人手不足が続いている施設ほど、まず一人でも採用したいという気持ちになるのは当然です。

そのため、面接や内定、入職日までは細かく決めていても、

「入職した翌日から誰が教えるのか」

「困ったときは誰に相談するのか」

「1か月後、3か月後に何を確認するのか」

といったことまでは決まっていない場合があります。

私たちは、外国人採用を考えるとき、採用50%、入職後50%くらいのつもりで設計することが大切だと考えています。

採用できたから成功ではありません。

その人が現場に慣れ、少しずつ仕事を覚え、施設の一員として働けるようになるところまで考えることが大切です。

基本は日本人スタッフの採用と同じです。外国人職員の場合は、そこに日本語や文化、日本で生活する経験の違いがあります。

その分だけ、確認する機会を少し増やす。それくらいの考え方で構いません。

入職後の離職や定着については別の記事で詳しくお伝えしますが、まず採用段階では、採った後を誰が支えるのかまで決めているかを確認してみてください。

外国人介護人材の採用に成功している施設に共通する3つの特徴 

外国人介護人材の採用に成功している施設に共通する3つの特徴 

外国人職員の受け入れがうまくいっている施設に、特別な人員や大きな予算があるとは限りません。

むしろ違いが出やすいのは、受入れ前の準備と、入職後の小さな関わり方です。

採用の目的と受入れ体制を先に言語化している 

受け入れがうまくいっている施設は、採用する前から準備を始めています。

特に大切なのが、なぜ外国人職員を採用するのかを現場にも伝えておくことです。

施設によっては、受入れ前に独自で研修会を開いたり、ケアコンパスが研修をお手伝いしたりすることもあります。

こうした場では、

「どのくらい日本語が話せるの?」

「どうやって仕事を教えればいい?」

と、現場スタッフから具体的な質問が出ます。

私たちが見ていて感じるのは、受入れ前に質問や不安が出る施設ほど、その後の準備もしやすいということです。

入職してから戸惑うより、先に不安を出しておけば、お互いに心の準備ができます。

大がかりな研修でなくても、まずは現場に受入れの目的を伝え、質問できる機会をつくることから始められます。

入職後の支援をコストではなく投資と考えている

外国人職員を育てるためにかける時間も、受入れ後に必要な投資の一つです。

たとえば、分からない言葉が出るたびに翻訳機ですぐ訳すのではなく、まずは日本語で説明してみます。本人にも日本語で質問してもらい、どうしても伝わらないときに翻訳機を使う施設もあります。

実際に、仕事の中で日本語を使う機会が多い人ほど、コミュニケーションの上達も早いと感じます。

最初の「時間がかかる」を無駄と考えず、半年後、一年後のための時間と考えられる施設は強いです。

新人の日本人スタッフも、最初から何でも一人でできるわけではありません。

外国人職員も同じです。一度に全部覚えてもらう必要はありません。

最初は少し時間をかけながら、仕事と日本語の両方を身につけられる環境をつくることが、長い目で見た定着につながります。

トラブルの芽に早く気付ける仕組みを持っている

受入れがうまくいっている施設ほど、入職後の振り返りを大切にしています。

現場では、お互いに「これで大丈夫」と思っていても、実際に話してみると認識がずれていることがあります。

特に入職したばかりの時期は、本人も何が正しいのか判断しにくいものです。

実際にあったのが、おむつ交換の教え方についてのケースです。

教育担当者から一つの方法を教わった外国人職員が、別の職員から違う方法を教えられ、「どれが正しいのか分からない」と迷ってしまいました。

介護の現場では、同じ業務でも職員によって少しずつやり方が違うことがあります。

そこで大切なのが、施設としてまず覚えてもらう基本の型を決めることです。慣れてからアレンジしても問題ありません。

振り返りがあれば、こうした小さな迷いにも早く気づけます。

トラブルが起きない施設が強いのではなく、小さいうちに気づける施設が強い。私たちは現場を見ていて、そう感じます。

受入れ前に、いつ誰が振り返るのかまで決めておくと、入職後の迷いにも気づきやすくなります。 

外国人介護人材の採用を成功させるための事前チェックリスト 

外国人介護人材の採用を成功させるための事前チェックリスト 

ここまで読んで、「うちでは何から準備すればいいのだろう」と感じた方もいるかもしれません。

採用を具体的に進める前に、まず次の6つを施設内で確認してみてください。

採用の目的を経営の言葉で説明できるか

なぜ外国人職員を採用するのか。人手不足だから、だけで終わらせず、現場にも説明できるようにしておきます。

受入責任者・教育担当の候補がいるか

入職後に「誰が教えるの?」とならないよう、中心になる職員を決めておきます。

既存職員への説明の場を設けているか

受け入れの目的や本人の日本語力、最初の教育方法などを事前に共有しておくと、現場の不安を減らせます。

住居・生活サポートの段取りがあるか

外国人職員にとっては仕事だけでなく、日本での生活も同時に始まります。困ったときの相談先まで確認しておくと安心です。

入職後の支援を誰が担うか決めているか

 施設が担うことと、登録支援機関など外部へ相談することを整理しておきます。丸投げでも、施設だけで抱え込む形でもない状態を目指します。

費用を3年〜5年程度の中長期で考えているか

紹介料など採用時の費用だけで判断せず、入職後の支援や教育も含めて考えます。特定技能1号は通算で最長5年の在留が可能なため、中長期で人材を育てる視点も大切です。
最初からすべて完璧である必要はありません。むしろ受け入れが初めてなら、決まっていないことがあるのは自然です。

大切なのは、決まっていないことに入職前に気づけることです。

まずは施設長、採用担当者、現場の教育担当者で、この6項目を一つずつ確認するところから始めてみてください。

まとめ|失敗のパターンを知れば、受入れ前から準備できる

外国人介護人材の採用で起こる失敗には、ある程度共通したパターンがあります。

だからこそ、事前に知っておけば避けられることも少なくありません。

大切なのは、採用をゴールにしないことです。

私たちは、「採用50%、入職後50%」くらいの気持ちで考えてほしいとお伝えしています。

  1. 誰が教えるのか。
  2. 困ったときは誰に相談するのか。
  3. 本人の成長をどう確認するのか。

ここまで考えておくと、受入れ後に施設も外国人職員も迷いにくくなります。

外国人介護職員の受け入れは、特別なことばかりではありません。

日本人スタッフを迎えるときと同じように、一人ひとりが安心して働ける環境を整えることが何より大切です。

言葉や文化、日本で生活する経験の違いに少し配慮を加えることで、外国人職員だけでなく、日本人スタッフにとっても働きやすい職場づくりにつながります。

私たちケアコンパスでも、施設ごとの状況に合わせた受入れ・定着支援を行っています。

「自分たちの施設では、何から準備すればいいのだろう」と迷ったときは、外国人採用が初めての施設向けのご案内も参考にしていただき、お困りのことがあればお気軽にご相談ください。