この記事で分かること
  • 人手不足で回らない介護施設でも、服薬・食事・排泄・夜間の見守りと人員配置基準を守らなければならない
  • 入浴の上乗せ回数や行事などは期限つきで減らせます
  • 外部の人手は期間を区切って使い、その間に採用と定着の計画を進めることが重要です
  • 今月と来月のシフトの空白を夜勤から書き出すと、派遣の依頼や業務の縮小を判断できるようになります
  • 介護・看護職員の不足が1割以内の突発的な欠員なら2026年6月開始の特例で年1回・翌々月まで減算が猶予されます
  • 1割を超える不足は対象外で翌月から所定単位数の70%に減算されます。
  • 急場をしのいだ後に同じ状況へ戻らない人員計画は、介護特化の登録支援機関であるケアコンパスが採用決定まで無料で相談に応じています

来月のシフト表に夜勤の空白が残ったまま、管理者のあなた自身が現場に入り続けていませんか。

人手が足りず回らなくなるのは、管理者の力量の問題ではありません。

緊急時の基本は、利用者の安全と人員配置基準だけを守り、それ以外の業務を期限つきで減らして時間を稼ぐことです。

この記事では、介護施設の欠員に悩む施設の相談を受けてきた筆者が、人手不足で回らない介護施設の緊急対応について以下の重要ポイントを順に解説します。

  • 人手不足で回らない介護施設が今日・今週・今月にやること
  • 人手不足の介護施設が削ってはいけない業務
  • 一時的に減らせる業務
  • 職員が足りない介護施設のシフトの組み直し方
  • 介護施設が派遣を緊急で頼むときの日数と費用の目安
  • 人手不足の介護施設が保険者や指定権者に相談するタイミング
  • 介護施設の人員欠如減算に2026年6月から設けられた猶予特例の条件

人手不足の介護施設が今日最初に手をつけることは?

人手不足の介護施設が今日最初に手をつけることは?

人手不足で介護施設が回らないとき、今日最初に手をつけるのは空白シフトの書き出しです。業務を減らすか、派遣を頼むか、行政に相談するかは、どの日のどの時間帯が空いているかがわかって初めて決められます。

やることは、今日・今週・今月の3段階に分けて考えます。

  • 今日中に確認すること
  • 今週中に動くこと
  • 今月中に判断すること

以下で段階ごとに解説します。

今日中に確認すること

今日中に確認するのは、今月と来月のシフトのどこに、いくつ空白があるかです。

  • 夜勤の空白日数
  • 早朝・夕方の食事と排泄の時間帯の不足
  • 入浴の時間帯の不足
  • 法人内で応援を頼める職員
  • 管理者自身の今月の勤務時間

特に夜勤の空白は最優先で数えてください。

夜勤の人数が基準に届かない日が重なると、日中の欠員より早く報酬の減算につながるからです。

書き出したら、次にどんなに人が足りなくても続ける介助を決めます。削らないものが決まっていれば、ほかの業務は落ち着いて見直せます。

今週中に動くこと

今週中に動くのは以下4つです。

  • 一時的に減らす業務と期間の決定
  • 利用者・家族へのお知らせ
  • 派遣会社への依頼
  • 保険者や指定権者への一報

派遣は依頼から現場に来るまで数日〜2週間ほどかかるため、シフトの空白が分かった週のうちに頼まないと間に合いません。

保険者への一報は、遅らせないほうが施設を守れます。2026年6月に始まった減算の猶予特例は、届出の期限が欠員の出た月の翌月までと決まっているからです。

今月中に判断すること

今月中に判断するのは以下の3つです。

  • 新規の受け入れを続ける
  • 減算の猶予特例を届け出る
  • 採用の計画を始める

今週の手配と並行して、判断の材料を集めておきます。

採用については、ハローワークへの求人の申込みを今月中に済ませておくと安心です。求人を出していることは、猶予特例を使うための条件の一つでもあります。

人手不足で回らない介護施設は業務の優先順位をどう決めればいい?

人手不足で回らない介護施設は業務の優先順位をどう決めればいい?

業務の優先順位は、削らない業務を先に決め、残りを期限つきで減らす順番で決めます。減らせそうな業務から探し始めると、忙しさに押されて守るべき介助まで削ってしまうおそれがあります。

以下で、順に解説します。

介護施設が人手不足でも削ってはいけない安全と人員配置基準のライン

人手不足でも削ってはいけないのは、以下のような命と体調に直結する介助と、人員配置基準・夜勤職員基準の人数です。

  • 服薬の介助と確認
  • 食事と水分の介助
  • 排泄の介助
  • 夜間の巡視と見守り
  • 事故・ヒヤリハットと状態変化の記録

事故の記録と申し送りも、最低限は残してください。

私は、削らない介助を管理者が紙に書き出し、職員全員に配ることをすすめています。人が足りないときほど、現場は何を省いてよいか迷い、各自が抱え込んでしまうからです。

削らないものがはっきりしていれば、ほかの業務を減らすことに職員が後ろめたさを感じずに済みます。

ただし、利用者の状態によって優先度は変わります。床ずれのリスクが高い方の体位変換や、嚥下に不安のある方の食事介助は看護職員と個別に確認しておきます。

人手不足の介護施設が一時的に減らせる入浴やレクや行事や記録の業務

一時的に減らせるのは以下業務です。どれも期限を決めて減らし、人手が戻ったら元に戻す前提で進めます。

業務 一時的な減らし方 守る基準・注意点
入浴 週3回以上にしている場合は週2回に戻し、入れない日は清拭で対応する 特養・老健は1週間に2回以上の入浴または清拭が基準
レクリエーション 集団レクを休み、短時間の体操や会話に置き換える 機能訓練の計画と食い違わないようにする
行事 誕生会や季節行事を延期する 家族が参加する行事は早めに知らせる
記録 選択式の定型にし、二重の転記をやめる 事故・服薬・状態変化の記録は残す
会議・委員会 延期するか時間を短くする 虐待防止など開催頻度が決まった委員会は記録を残して実施する

厚生労働省の特別養護老人ホームの基準省令で、1週間に2回以上の入浴または清拭と定められています。入浴を減らすと運営指導で必ず指摘されると心配する方もいますが、週2回を下回らなければ基準の範囲内です。

グループホームには回数の定めはありませんが、本人の生活習慣への配慮は欠かせません。

業務を減らすときに介護施設が利用者と家族へ伝える説明の例

業務を減らすときは、理由と期間、守ることを1枚のお知らせにまとめて家族へ伝えます。口頭だけで済ませると、伝わり方に差が出て問い合わせが現場に集中するためです。

お知らせは、次の6つの項目で組み立てると漏れが減ります。

項目 文例
冒頭 いつも施設の運営にご理解をいただき、ありがとうございます。
理由 職員の体制が一時的に不足しており、安全を最優先した運営に切り替えます。
変更内容 入浴を週2回とし、ほかの日は清拭で対応します。季節の行事は延期します。
期間 ○月○日から○月○日までを予定しています。
守ること お食事、お薬、排泄のお手伝いと夜間の見守りは、これまでどおり行います。
問い合わせ先 ご不明な点は、施設長の○○までご連絡ください。

理由の欄に、個別の職員の退職や病気の事情は書かないでください。期間が延びるときは、終了日の前に改めて知らせると信頼を保てます。

人手不足で回らない介護施設のシフトはどう組み直せばいい?

人手不足で回らない介護施設のシフトはどう組み直せばいい?

シフトは、基準に関わる時間帯から埋め、職員の連続勤務に上限を設けて組み直します。足りない人数を全員で薄く分け合う組み方は、短い期間で次の退職者を生みやすいからです。

以下で順に解説します。

人手不足の介護施設がシフトで最初に埋める時間帯

シフトで最初に埋めるのは夜勤です。そのあとに、早朝・夕方の食事と排泄の時間帯、入浴の時間帯、日中の見守りの順で埋めていきます。

  1. 夜勤
  2. 早朝・夕方の食事と排泄の時間帯
  3. 入浴の時間帯
  4. 日中の見守り

夜勤を先にする理由は、夜勤職員基準が1日単位で判断されるためです。人数が足りない日が2日以上続くか、月に4日以上あると、翌月の報酬が減算されます。

日中の介護職員の人数は月の勤務時間の合計でみるため、多少の凸凹は月の中で調整できます。

法人内の別の事業所から応援を受けるときは、兼務した時間を事業所ごとに勤務表で分けてください。記録が混ざると、人員基準を満たしていることを後から示せません。

職員の退職連鎖を防ぐシフトの組み立て方

職員の退職ドミノを招きかねない連続勤務を防ぐには、休みを先に確定させてから勤務を入れる順番でシフトを組みます。労働基準法第35条で、毎週1回または4週4日以上の休日を与えると定められています。

人が足りない月でも、この日数を下回ることはできません。

職員の連続勤務を防ぎ休みを確保するシフトの組み立て方

筆者が欠員の相談を受けてきた施設では、次のようなルールを置くと職員の疲れ方が目に見えて減ったことがありました。

  • 休みの希望を先に固定する
  • 連続勤務は原則5日までにする
  • 夜勤明けの翌日は休みにする
  • 夜勤の回数の上限を一人ずつ決める

連続勤務の5日は法律の基準ではありませんが、実務上はここをどのくらい守れるかがスタッフの徒労感や疲労感を解消するための目安となります。

時間外労働を増やす場合も、36協定で定めた上限の範囲に収めてください。

管理者や主任が介護現場や夜勤に入るかを判断する基準

現場に入ってよい状態 入り続けるのを避けたい状態
2〜4週間など終わりの日付が決まっている 終わりの見通しが立っていない
派遣の手配や採用が並行して進んでいる 外部への依頼がまだ動いていない
管理者の代わりに判断できる主任がいる 判断できる人が管理者しかいない

管理者や主任が現場や夜勤に入ること自体は、資格と兼務の条件を満たせば可能です。ただし、入るのは期限を決めた短期間に限り、管理の仕事をする時間を確保できることが前提になります。

特養の施設長のような管理者は常勤で専ら管理にあたるのが原則で、管理に支障がない範囲で兼務が認められています。

現場に入った時間は、勤務表で管理者の時間と介護職員の時間に分けて記録してください。

私が派遣の営業として相談を受けた施設でも、管理者が夜勤に入り続けたところほど、外部への依頼や行政への相談が後回しになっていました。

判断できる人が夜勤で疲れ切ると、翌週の手配まで考える余力が残りません。

結局ベストの対策方法は派遣の依頼?

結局ベストの対策方法は派遣の依頼?

派遣は、期間と時間帯を決めて頼めば、緊急時に最も早く人を確保できる手段です。「高いから使いたくない」「一度使うとやめられない」とためらっている管理職の方も少なくありません。

お気持ちはわかりますが、期限を決めて使うことで不安や懸念を小さくできます。

介護派遣が現場に来るまでの日数と費用の目安

介護派遣は、依頼から現場に来るまで早くて3日〜1週間、夜勤ができる人材だと2〜3週間、人材紹介となると入職まで1カ月以上かかるのが目安です。費用は以下が目安となり、地域と資格で変わります。

項目 目安
日勤の請求単価 時給換算1,900〜2,800円程度
夜勤1回の請求額 3万〜4.5万円程度

緊急時の派遣費は、採用が決まるまでのつなぎの費用と割り切ってよいと私も考えています。ただし、派遣で埋める期間と、その間に進める採用の計画を最初に決めておくことが条件です。

派遣費が中長期でどれだけ重くなるかは、外国人介護人材の採用は本当にコスト削減になる?の記事で比較しています。

介護施設の夜勤を派遣で埋められるか

介護施設の夜勤は派遣でも埋められますが、その人が一人で夜勤を任せられるかを事前に確認する必要があります。夜勤は判断を一人で下す場面が多く、施設の手順を知らない人には負担が大きいからです。

  • 夜勤の経験の有無と年数
  • 単独での夜勤の経験
  • 初回に日勤か同行勤務で入れるか
  • 急変時の連絡手順を事前に伝える機会
  • たんの吸引など医療的ケアの対応可否

初日からいきなり単独の夜勤を任せるのは避け、日勤か同行で1回入ってもらうと事故のリスクを減らせます。たんの吸引は、研修を修了して登録を受けた職員でなければ行えません。

労働者派遣法第26条第6項により、紹介予定派遣を除き、派遣先は面接などで派遣される人を選ぶ行為をしないよう努めることとされています。施設側が人を選べない分、最初に伝える条件が正確なほど現場に合う人が来やすくなります。

急ぐ場合は、複数の派遣会社へ同時に頼んでもかまいません。その際は、どの会社にも同じ条件を伝えてください。

介護施設は人手不足を行政に相談できる?

介護施設は人手不足を行政に相談できる?

人手不足で回らないときは、保険者や指定権者に相談してかまいません。相談は指導を受けに行くことではなく、減算の取り扱いや受け入れの判断を確認する機会です。

以下で、順に解説します。

保険者や指定権者に相談できる内容

相談できるのは以下です。

  • 人員基準を割りそうな見込み
  • 減算の取り扱い
  • 猶予特例の届出
  • 利用者の受け入れの調整

窓口は、特養や老健なら都道府県や政令市などの指定権者、グループホームなど地域密着型なら市町村です。

保険者や指定権者に相談すべきタイミング

行政への相談は、できるだけ先送りしたいと考える管理者が少なくありません。しかし、欠員が出るとわかったその月のうちが相談にふさわしい目安です。

取り扱いを確認してから動けるうえ、後から減算漏れが見つかって報酬を返す事態を防げるからです。

グループホームなど地域密着型サービスでは、運営推進会議でも状況と対応を報告しておくと地域の理解を得やすくなります。法人本部には、空白の日数と派遣費の見込みを数字で伝えてください。

新規の受け入れを止めるかを判断する基準

新規の受け入れは、以下のように人手不足が長期になる見込みのときや、今の利用者の必要な介助が手薄になるときに、一時的に控える判断が考えられます。

  • 夜勤の空白が月に複数日残る
  • 今の利用者の入浴を週2回保てない
  • 派遣と採用の見通しが立たない

ただし、正当な理由なくサービスの提供を断ることは運営基準で禁じられています。控えるときは理由と期間を記録し、保険者に確認したうえで、ケアマネジャーにも事前に伝えてください。

私の実感では、受け入れを短期間止めて今いる職員を守った施設のほうが結果として早く通常の運営に戻れています。再開は、夜勤のシフトが2か月先まで埋まった時点を一つの目安にしてください。

人手不足で介護施設が人員配置基準を割るとどうなる?

人手不足で介護施設が人員配置基準を割るとどうなる?

人員配置基準を割っても、翌月からすぐに報酬が減るとは限りません。減算が始まる月は不足の程度で変わり、2026年6月からは一定の条件で減算を猶予する特例も始まっています。

以下で、順に解説します。施設の種別や自治体で取り扱いが異なるため、最終的には保険者に確認してください。

介護施設の人員欠如減算が始まる月と減算の割合

人員欠如減算は、介護・看護職員が基準から1割を超えて不足したら翌月から、1割以内の不足なら翌々月から始まります。1割以内の場合は、翌月の末日までに基準を満たせば減算されません。

減算の間は、利用者全員の所定単位数が70%になります。

夜勤は別の基準で判断します。夜勤職員基準を下回る日が2日以上続くか、月に4日以上あると、翌月は利用者全員の報酬が減算されます。

特養などでは所定単位数の97%での算定です。

欠員が出たことで、すぐに指定が取り消されるわけではありません。

2026年6月から始まった人員欠如減算の猶予特例を使える条件

2026年6月から、突発的な欠員が出て求人に取り組んでいる施設は、年1回に限り、欠員の出た月の翌々月まで人員欠如減算が猶予されます。

条件 内容
欠員の理由 職員や家族の突発的な体調不良で1か月を超える不在が見込まれる場合、自己都合の急な離職が複数重なった場合など
不足の程度 看護・介護職員は1割以内(1割を超える不足は対象外)
求人の取り組み ハローワークや福祉人材センターなどへの求人の申込み
回数と期間 1年に1回、欠員の出た月の翌々月まで
届出 欠員の出た月の翌月までに、求人票の写しを添えて提出
主な対象 特養、老健、介護医療院、短期入所、特定施設、通所介護、通所リハビリなど

猶予を受けるには、一部の職員に過度な負担が偏らないよう、労働時間を適正に管理することが前提です。地域密着型サービスの扱いや届出の様式は自治体で異なるため、指定権者に確認してください。

月末には、その月の勤務時間が基準に届くかを試算し、届かない見込みなら月が変わる前に連絡しておくと安心です。

まとめ

緊急対応でできるのは、採用が決まるまでの時間を稼ぐところまでです。稼いだ時間で採用と定着の準備を進めなければ、数か月後に同じ状況へ戻ってしまいます。

読み終えたら、次の順番で動いてみてください。

  1. 今日、今月と来月のシフトの空白を書き出す
  2. 今週、減らす業務を決めて派遣会社に連絡する
  3. 今月、保険者に相談してハローワークに求人を出す
  4. 落ち着いたら、採用と定着の計画をつくる

半年先や3年先を見据えた対策は、人手不足の解決策を比較した記事で効果とかかる期間を並べて紹介しています。

外国人材は緊急対応には間に合いませんが、国内に住んでいる人材を採用する場合は海外から招くより入職までの期間は短くなります。

夜勤を任せる条件は特定技能外国人は夜勤ができる?の記事で確認できます。

介護特化の登録支援機関であるケアコンパスは、採用が決まるまで相談は無料で、入職1年後の定着率は93.6%です。

急場をしのいだあと、同じ状況に戻らないための人員計画を一緒に考えたい施設は、外国人採用が初めての方へのページをご覧ください。