外国人介護人材は施設経営をどう変える?モデルケースで具体的にわかる経営インパクトを試算!
| この記事で分かること |
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介護職員の欠員が続くと、現場の負担だけでなく施設の収支そのものがダメージを受けます。
それでも外国人介護人材の受け入れとなると、最初の一歩を踏み切れず、理事会への説得に自信がなくなる、そんな施設も多いのではないのでしょうか?
この記事では、外国人介護人材の受け入れが施設経営に与える影響を、稼働の回復とシフト費用の圧縮という2つの試算モデルで示します。
結論を先にお伝えすると、経営インパクトは人件費の削減ではなく収入と稼働の側に出ます。
外国人介護人材の経営インパクトが表れる4つの領域とは?

外国人介護人材の受け入れが施設経営に与える影響は以下4つの領域に分かれて表れます。
- 稼働
- 費用
- 体制の持続性
- 採用の安定性
それぞれ見るべき数字が違うため、まとめて効果があったと評価すると判断を誤ります。上記4点について、測るべき指標を先に整理します。
稼働についてはどの数字で測る?
稼働については、以下3つの数字で測ります。
- 空床数
- 受け入れ制限をかけている日数
- 稼働率
職員が足りないために新規入所を止めている施設では、空床は需要不足ではなく人員不足が原因です。この区別が重要になります。
需要がないなら人を増やしても埋まりませんが、人員が理由なら職員の充足がそのまま収入の回復につながるからです。
数え方はシンプルです。直近3か月の平均入所者数と定員の差を出し、そのうち入所希望はあったが職員体制を理由に断った分を切り分けます。
ショートステイの受け入れ制限や、特定のユニットを実質的に休止している状態も、ここに含めて数えます。この切り分けができていない施設では、稼働の試算が過大にも過小にもなります。
費用についてはどの数字で測る?
費用の領域で見るべき数字は以下2つです。
- スポット派遣で埋めている月間シフト本数
- 欠員の穴埋めによって発生している月間の時間外労働時間
どちらも欠員がなければ払わずに済んだ支出であり、経営上は臨時費用として扱えます。
ここで注意していただきたいのは、常勤職員の給与そのものは削減対象にならない点です。定数分の人件費は、日本人職員であっても外国人職員であっても同じように発生します。
減らせるのはあくまで、欠員を埋めるために上乗せで払っている部分です。この2つの数字を給与台帳と派遣請求書から抜き出せば、試算の材料はそろいます。
体制の持続性はどこに表れる?
体制の持続性は以下に表れます。
- 夜勤枠の充足率
- 欠員が続いている期間の長さ
夜勤を回せる職員が特定の数名に偏っている施設は、その1人が抜けた瞬間に稼働制限へ直行します。金額としては現れませんが、収支を一気に崩す要因です。
欠員期間の長さも同じ性質を持ちます。1か月の欠員なら既存職員の頑張りで吸収できても、半年を超えると疲弊が蓄積し、別の退職を呼びます。
欠員が何か月続いているかを記録している施設は多くありません。しかし、この数字こそが次の離職リスクを予告します。
採用の安定性はどう読む?
採用の安定性は以下で読み取ります。
- 在留期間
- 欠員が出てから補充できるまでのリードタイム
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限で、その後は介護福祉士の資格取得により在留資格「介護」へ移行する道があります。つまり、いつまで在籍が見込めるかを制度上の期間から逆算できます。
日本人職員の採用では、この逆算ができません。求人を出しても応募がゼロの月が続き、いつ埋まるか誰にも読めない状態が普通です。
人員計画の精度という観点では、ここが最も大きな差になります。
外国人介護人材の採用は人件費を下げるための手段といえる?
外国人介護人材の採用は、人件費を下げるための手段ではありません。特定技能制度では、日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を支払うことが受け入れの要件として定められています。
安く雇うことは制度上できず、実務上も社会保険料や住居支援などの負担を含めれば、日本人職員より支出が少なくなることはありません。
外国人介護人材を人件費の削減策として位置づける前提で受け入れた施設は現場運営で必ずつまずきます。経営改善インパクトは支出を削る側ではなく、止まっていた収入を動かす側に出るからです。
この記事が稼働とシフトの話を扱うのは、そのためです。なお採用費用の面からの比較は、外国人介護人材の採用でコストは下がるのかで別途整理しています。
外国人介護人材は就労開始から人員配置基準に算入できる?

厚生労働省の通知によると、介護分野の1号特定技能外国人は就労開始と同時に人員配置基準上の職員として算入できます。
ただし、条件があります。同じ通知は、一定期間は経験のある職員とチームでケアに当たるなど、受入施設における順応をサポートしケアの安全性を確保する体制をとることを求めています。
算入できることと、いきなり単独で配置してよいことは別です。この記事の試算はすべて、この算入可否を前提としています。
制度そのものの内容は特定技能「介護」とはで確認できます。
外国人介護人材で欠員が埋まると施設の稼働はどう変わる?

ここからは具体的な数字で見ていきます。モデルとするのはユニット型個室80床の特別養護老人ホームです。
介護職員に4名の欠員があり、職員体制を理由に新規入所とショートステイの受け入れを制限している状態を想定します。以下の4点を順に解説します。
- 空床が生む機会損失の金額
- 職員1名の充足で戻る年間収入
- 立ち上がり期間の織り込み方
- 効果が出やすい施設の条件
空床と受け入れ制限は1日あたりいくらの機会損失になる?
モデル施設では、空床6床が続いた場合の機会損失は年間およそ1,785万円になります。1床1日あたりの収入を8,150円として、6床分を365日で計算した金額です。1日あたりでは48,900円、1か月では約149万円が入らないまま過ぎていきます。
この8,150円という単価は、令和6年度改定後のユニット型個室・要介護3の基本報酬815単位をもとにした推定値です。地域区分による1単位あたりの単価差や各種加算は含めていないため、上の金額は控えめに見積もった損失といえるでしょう。
自施設で計算する際は、直近の月次実績から入所者1人1日あたりの平均収入を出して置き換えてください。
介護職員1名の充足で年間の施設収入はどこまで戻る?
常勤の介護職員が1名充足すると、モデル施設では年間およそ595万円の収入が戻ります。職員1名の増員で2床の受け入れを再開できると仮定し、2床×8,150円×365日で計算した金額です。
就労開始から受け入れ再開まで3か月かかると見込むと、初年度は9か月分のおよそ445万円になります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| モデル施設 | ユニット型個室80床 |
| 平均空床(仮定) | 6床 |
| 1床1日あたり収入(推定) | 8,150円 |
| 空床による年間機会損失(推定) | 約1,785万円 |
| 職員1名の充足で再開する床数(仮定) | 2床 |
| 年間収入の回復額(通年・推定) | 約595万円 |
| 初年度の回復額(9か月分・推定) | 約445万円 |
仮定のモデルケースであり、施設の条件によって金額は変わります。それでも、職員1名という単位で収入が動く幅がこの規模になることは押さえておく価値があります。
就労開始から戦力化までの立ち上がり期間はどう織り込む?
初年度の試算では、就労開始から3か月分を効果額から差し引くことをおすすめします。人員配置基準には就労と同時に算入できますが、記録の書き方や利用者ごとの介助方法を覚えるまでには時間がかかるためです。
この3か月という仮定の立ち上がり期間について私が現場で見てきた限りでは、日本語能力よりも受け入れ側の準備の差が期間を左右します。業務手順書が整理されている施設は早く、口頭伝承で回している施設は長くかかります。
実際の立ち上がりの様子は導入事例で施設ごとの経過を公開していますので、自施設の見積もりの参考にしてください。説明用の資料作成の段階では、初年度と2年目以降を分けて示すと説明が通りやすくなるでしょう。
稼働インパクトが出やすい施設と出にくい施設の違いは?
稼働インパクトが大きく出るのは、入所待機者がいるのに職員体制を理由に受け入れを止めている入所系施設です。入所系施設とは以下に当たります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 有料老人ホーム
埋めるべきベッドがすでに存在するため、職員の充足がそのまま収入に変わります。
反対に効果が出にくいのは、需要側の理由で空きが出ている施設です。周辺の高齢者人口が減っている地域や競合施設が近接している場合は、職員が増えても空床は埋まりません。
訪問系サービスについては、特定技能外国人の従事に介護職員初任者研修の修了と実務経験などの要件が課されるため、稼働の試算に入れる前に従事可能かどうかの確認が必要です。
外国人介護人材でシフトが埋まると残業代と派遣費はどこまで下がる?

収入側の次は支出側を見ます。欠員を埋めるために発生している臨時の支出は、スポット派遣費と時間外手当の2つです。どちらも職員が充足すれば不要になる性質の費用です。以下の5点を順に解説します。
- 介護分野の派遣単価
- 年間の派遣費の圧縮額
- 残業削減の見込み方
- 教育負荷の差し引き
- 使用した数値の確からしさ
介護分野のスポット派遣は1シフトあたりいくらかかる?
厚生労働省の令和6年度労働者派遣事業報告書の集計結果に示された介護サービス職業従事者の全国平均派遣料金は、1人1日8時間あたり16,282円です。
自施設の直近の請求書から1シフトあたりの単価を出しておくと、試算の精度が上がります。
派遣シフトを常勤職員に置き換えると年間の差額はいくらになる?
モデル施設では、職員1名の充足によって年間およそ171万円の臨時支出が消えます。内訳は派遣費の圧縮が約117万円、時間外手当の圧縮が約54万円です。
月10シフトを派遣で埋めている状態から6シフト分を自法人の職員に置き換え、施設全体で月80時間発生している時間外のうち3割が減ると仮定した計算です。
| 項目 | 現状 | 職員1名充足後により置き換え量 | 差額 |
|---|---|---|---|
| スポット派遣 | 年120シフト 約195万円 |
年48シフト | 72シフト減で約117万円の減 |
| 時間外手当 | 月80時間 時間外単価1,875円 年約180万円 |
月56時間 | 24時間減で約54万円の減 |
| 臨時支出の合計 | 約375万円 | 約171万円減 |
仮定のモデルケースであり、施設の条件によって金額は変わります。
なお、この表には常勤職員の給与そのものを含めていません。定数分の人件費は採用方法にかかわらず発生する費用であり、採用手段どうしの費用比較はこの記事の範囲外としているためです。
既存職員の残業削減はどの範囲まで見込んでよい?
時間外の削減幅は、上記の仮定のように3割程度を上限の目安として置くことをおすすめします。
削減幅を大きく見積もり過ぎることには慎重であるべきです。欠員が埋まっても、行事や急な体調不良への対応で発生する時間外は残ります。
加えて、新しく入った職員への指導のために、指導役の職員が時間外に記録を書く時間が一時的に増えることも考えられます。
外国人介護人材の受け入れで数字に表れにくい3つの経営効果とは?

ここまでの2つの試算に乗らない効果もあります。金額として計上しにくい一方で、放置すると収支を大きく崩す領域です。以下の3点を順に解説します。
- 夜勤体制の維持
- 連鎖離職の防止
- 採用計画の予見性
夜勤体制の維持が施設収支に効くのはどの部分?
夜勤体制が維持できるかどうかは、稼働制限をかけずに済むかどうかに直結します。夜勤を担える職員が数名に偏っている施設では、その1人が退職または長期休業した時点でユニットの休止や受け入れ停止という判断を迫られます。
前段の試算に当てはめれば、2床の停止で年間約595万円の収入が止まる計算です。
夜勤に入れる職員が1人増えることの意味は、シフト表の1マスが埋まることではありません。特定の職員に依存した状態から抜け出せることです。
この効果は損益計算書には出てきませんが、止まらなかった収入として確実に存在します。
既存職員の疲弊による連鎖離職はどう防げる?
欠員が長引くほど、残った職員に負担が集中し、次の退職が発生します。この連鎖を止める最も直接的な方法は、欠員期間を短くすることです。
半年間募集しても応募がない状態を続けるより、確実に入職が見込める経路を1本持っておくほうが結果として現場は守られます。
経営上の効果として最も大きいのはこの部分だと考えています。1人の退職は、採用費用だけでなく、引き継ぎの時間、残る職員の士気、そして次の退職の呼び水という形で連鎖します。
試算表には載せられませんが、欠員を放置した施設がどうなるかは多くの経営者がすでに経験されているはずです。
在留期間が読めることで採用計画はどう変わる?
在留期間が制度上決まっていることで、数年単位の人員計画が引けるようになります。特定技能1号は通算5年が上限で、その間に介護福祉士の資格を取得すれば在留資格「介護」へ移行し、期間の上限なく就労を続けられます。
入職から資格取得までの道筋を、施設側があらかじめ設計できる構造です。
この予見性は、増床や新規開設の判断に効きます。人員が確保できる時期が読めなければ、事業計画そのものが立てられません。
逆に読めるようになると、ベッドを増やす判断も、既存ユニットを再開する判断も根拠を持って理事会に諮れます。
まとめ|外国人介護人材の経営インパクトを自施設で試算するには何から始める?
まず、A4用紙1枚に以下3つの数字を書き出してください。
- 直近3か月の平均空床数
- スポット派遣で埋めた月間シフト本数
- 欠員の穴埋めで発生した月間の時間外時間
この3つがそろえば、この記事の計算式に当てはめるだけで自施設の効果額のレンジが出ます。
次に、初年度と2年目以降を分けて計算します。立ち上がり期間と教育負荷を初年度から差し引くことで説得力の高い数字になります。
そのうえで、実際に受け入れが可能な時期と要件を確認する段階に進みます。
ケアコンパスでは、採用が決まるまでの費用をいただかない形で、施設の状況に合わせた受け入れ計画のご相談をお受けしています。
制度の確認から入職後の生活支援まで一つの窓口で対応しますので、試算の前提づくりからご一緒できます。試算の数字が固まる前でも構いません。
外国人採用が初めての方へから、まずは現状の数字をお聞かせください。
よくある質問
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特定技能の外国人職員は就労開始からすぐ人員配置基準に算入できますか?
算入できます。
厚生労働省の平成31年3月29日付け通知が、介護分野の1号特定技能外国人について、就労と同時に職員等とみなす取扱いとしても差し支えないと示しています。ただし一定期間は経験のある職員とチームでケアに当たるなど、順応をサポートし安全性を確保する体制をとることが求められます。算入できることと単独配置してよいことは別だとお考えください。 -
外国人介護人材を受け入れると人件費は下がりますか?
下がりません。
特定技能制度では日本人が従事する場合と同等額以上の報酬が要件とされており、安く雇うことは制度上できません。経営インパクトが出るのは支出側ではなく収入側です。具体的には、職員体制を理由に止めていた入所受け入れの再開と、欠員を埋めるために払っていたスポット派遣費や時間外手当の圧縮という形で表れます。 -
介護職員が1名増えると年間でいくらの経営効果が見込めますか?
ユニット型個室80床のモデル施設では、通年でおよそ766万円です。内訳は稼働回復による収入増が約595万円、臨時支出の圧縮が約171万円です。初年度は立ち上がり3か月分の教育負荷を差し引き、およそ550万円になります。いずれも前提を置いたモデルケースの数字ですので、自施設の空床数と派遣シフト本数に置き換えてご計算ください。
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効果が出るまでにどのくらいの期間を見込めばよいですか?
試算上は就労開始から3か月を立ち上がり期間として差し引くことをおすすめします。この数字には法律的な根拠はありません。受け入れ側の準備状況で大きく前後します。
業務手順書が整理され、指導役が事前に決まっている施設は短く済みます。事業計画では初年度と2年目以降を分けて示すと、効果の見込みが過大に見えず説明の説得力が増すでしょう。 -
試算を作るために自施設で用意すべきデータは何ですか?
直近3か月の平均空床数、スポット派遣で埋めた月間シフト本数、欠員の穴埋めで発生した月間時間外時間の3つです。加えて、入所者1人1日あたりの平均収入を月次実績から出せると精度が上がります。ケアコンパスでは施設の状況をうかがったうえで、受け入れ可能な時期や体制の条件を整理してお伝えしていますので、試算の前提づくりの段階からご相談いただけます。






