この記事で分かること
  • 介護施設で働く外国人職員が困りごとを相談できない背景には、文化的配慮や日本語の壁、不明確な相談導線が存在します。
  • 相談先を一本化して複数のチャットや対面の入口を整備し、日頃から小さな困りごとを拾い上げる初動アクションを実践できます。
  • ケアコンパスは、延べ支援人数160名の実績と月額3万円の支援業務費用をベースに母国語対応を含む実効性の高い相談体制づくりをサポートします。

「何か困っていることはない?」と聞いても、返ってくるのは「大丈夫です」だけ。相談がない=問題がない、とは限りません。

相談されないのには理由があり、相談しやすい環境は仕組みでつくれます。

この記事では、相談できない3つの理由相談につながる仕組み母国語対応避けたい対応を、一般社団法人外国人介護留学生支援機構(ケアコンパス)の青山が実際の支援経験からお伝えします。

外国人職員が気軽に相談できない3つの理由とは?

外国人職員が気軽に相談できない3つの理由とは?

外国人職員が相談しない背景には、本人の性格だけではなく、文化・日本語・相談導線の3つの壁があります。

まずは「なぜ言えないのか」を分けて考えることが、相談しやすい環境づくりの第一歩です。

目上の人に困りごとを言うのは失礼という感覚

国や育ってきた環境によっては、目上の人に不満や困りごとを伝えることを失礼だと感じる文化もあります。日本もどちらかと言えば、そのように感じやすい国民性でしょう。

そのため、上司に相談するよりも、自分で我慢しようとする人もいます。

支援の現場では、真面目で周囲に気を遣う人ほど悩みを抱えたまま働いていることがあります。

施設側から見ると問題なく働いているようでも、本人の中では少しずつ不安や不満が積み重なっていることもあります。

相談しないことを「問題がない」と受け取らず、普段から声をかけ、困っていることや不満を話しても大丈夫だと思える関係をつくっておくことが大切です。

日本語で説明しきれない

日常会話ができることと、自分の悩みを日本語で説明できることは別です。

仕事中の簡単な会話はできても、お金や家族、体調、人間関係など複雑な事情や気持ちまで日本語で伝えるのは難しいことがあります。

本人の中では困っていても、「うまく説明できない」「誤解されたら嫌だ」と考え、相談そのものを諦めてしまうこともあります。

誰に・いつ・どう言えばいいか分からない

相談したい気持ちがあっても、誰に伝えればよいのか分からなければ、行動にはつながりません。

施設の職員があまりに忙しそうにしていると、「今は話しかけない方がいい」と遠慮する人もいます。

また、相談は大きな問題が起きたときにしかできないと思い、小さな悩みを何個も抱え込むケースもあります。

「困ったら相談してね」と伝えるだけでなく、誰に、どの方法で、どのくらいの困りごとでも相談してよいのかがはっきり分かる状態にしておくと安心です。

相談の入口が見えているだけでも本人の話しやすさは変わります。

外国人介護職員が相談しやすくなる仕組みのつくり方

外国人介護職員が相談しやすくなる仕組みのつくり方

相談しやすい環境は、本人に勇気を出してもらうだけではつくれません。

相談先、相談方法、相談後の対応まで施設側が分かりやすい仕組みを用意することがポイントです。

相談先を一本化し、顔の見える窓口にする

「困ったら〇〇さんに相談すればいい」と分かっていると、本人も動きやすくなります。相談先の名前や連絡方法は、掲示や母国語表記でも分かるようにしてしておきましょう。

ただ、実際には相談先を一人だけに決めるのが難しいこともあります。例えば、異性の上司には話しにくい体調の悩みがあったり、話題の内容や人によって話しやすい相手が違ったりするためです。

ケアコンパスの支援先でも、外国人職員ごとに連絡用のグループをつくり、必要に応じて複数の担当者が連携しています。

大切なのは、相談相手を一人に限定することではなく、誰に相談しても必要な人につながる状態をつくることです。

日頃から顔を合わせ、雑談できる関係も相談への入口になります。

対面・チャット・面談のついでなど相談の入口を複数用意する

相談方法も一つに絞る必要はありません。

対面では言いにくいことでも、チャットなら伝えられる人がいます。反対に、文章で日本語を書くより、直接話した方が伝えやすい人もいます。

また、定期的に話す機会の中で、何気ない会話から小さな困りごとが出てくることもあります。

本人に「相談しなければ」と構えてもらうより、普段の連絡や会話の中に小さな入口をいくつかつくっておく方が自然です。

相談する方法を本人が選べることも話しやすさにつながります。

「相談してよかった」という体験をつくる

相談しやすい環境をつくるうえで、最初に相談を受けたときの対応はとても大切です。

話を聞いただけで終わったり、その後どうなったのか分からなかったりすると、本人は「相談しても変わらない」と感じてしまいます。

すぐに解決できない内容でも、「確認しています」「ここまで進んでいます」と途中経過を伝えるだけで安心につながります。

そして、対応が終わったら結果も本人へ伝えます。

「相談したらきちんと返ってくる」という経験を積み重ねることが次の相談につながります。

参考記事:「外国人スタッフとの面談で何を話す?質問例と「大丈夫です」で終わらせない工夫

母国語で相談できる場が外国人スタッフの本音を引き出す

母国語で相談できる場が外国人スタッフの本音を引き出す

日本語では話しにくかったことが、母国語になると話せることがあります。

特に、病気や手続き、お金のことなど、内容が複雑になるほど母国語で確認できる安心感は大きくなります。翻訳ツールは便利ですが、病状や気持ちなど込み入った相談では細かなニュアンスまで確認できないことがあります。

以前、体調を崩した外国人職員から相談を受けたことがあります。日常会話はできても、入院手続きや費用、病状を日本語で十分に理解することが難しい状況でした。

母国語を話せる支援担当者が話を聞き、本人の希望を確認しながら必要な情報を整理しました。最終的には、施設の責任者に限って状況を共有しました。

施設には直接言いにくいことでも、外部に母国語で相談できる相手がいることで抱え込まずに話せることがあります。

ケアコンパスでも母国語で相談できる窓口を設け、施設への共有が必要な場合は本人の意向を確認しながら連携しています。

相談・苦情への対応は特定技能1号の義務的支援

相談・苦情への対応は特定技能1号の義務的支援

特定技能1号では、職業生活・日常生活・社会生活に関する相談や苦情への対応が義務的支援に含まれています。

出入国在留管理庁の運用要領では、本人が十分に理解できる言語で相談できる体制を整えることが求められています。母国語に限らず、内容を十分に理解できる言語で対応することがポイントです。

また、本人の勤務形態に合わせて、就業時間外にも相談しやすい体制が必要です。

自社で支援する場合は、誰が相談を受けるのか、担当者が不在のときや時間外はどう対応するのかまで決めておくと安心です。

制度上の窓口があっても、本人が相談先を知らなければ使えません。

困ったときに迷わず相談できるよう、普段から相談方法を伝えておく必要があります。施設内だけで対応が難しい場合は、登録支援機関へ委託する方法もあります。

外国人職員から相談されたときにやってはいけない対応とは?

外国人職員から相談されたときにやってはいけない対応とは?
相談窓口があっても、相談を受けた後の対応によっては、次から話してもらえなくなることがあります。

私たちが特に気をつけているのは、本人が「話さなければよかった」と感じる対応をしないことです。

避けるべき対応(話さなければよかったと感じる対応) 私たちが心がけている対応
「大丈夫、心配ないよ」と終わらせる 何に困っているのかを丁寧に聞き、確認したうえで返答します。
笑い話にしたり、軽く扱ったりする 本人がその状況をどう感じているのかを受け止め、確認します。
本人の同意なく職場に広める 情報をどこまで共有してよいか、あらかじめ本人と確認します。
対応した結果を伝えない 相談への対応状況について、途中経過から最終結果まで伝えます。

支援先であった話ですが、ベトナム料理でよく使われるパクチーを話題に冗談を交わす場面がありました。

その場では本人も笑って「おいしいよ」と返していましたが、同じような話を嫌だと感じる人もいます。

こちらに悪気がなくても、受け取り方は人によって違います。外国人だからと決めつけず、その人がどう感じているかを見ることが大切です。

まとめ

外国人職員から相談がないのは、問題がないからではなく、相談しやすい仕組みが整っていないからかもしれません。

相談先を分かりやすくすることや、対面・チャットをはじめとする複数の相談手段の整備対応結果や進捗の丁寧なフィードバックが不可欠です。さらに、必要に応じて母国語で相談できる受け皿があると、本人も一人で抱え込みにくくなります。

相談は待つものではなく、相談しやすい導線を整えることで生まれます。

私たちケアコンパスでも、施設の状況に合わせた相談体制づくりや母国語での支援を行っています。現在の相談体制を見直したい場合は、お気軽にご相談ください。

登録支援機関をお探しの方へ